誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「ではこのたびめでたく卒業の日を迎えられた、諸先輩たちからそれぞお言葉を」


 司会進行役の三年生が、卒業生たちを一箇所に集めた。


 学部の四年生、他に大学院生もいる。


 修士課程二年間を終え、卒業していく人。


 さらに博士課程の二年間を積み重ねて、卒業していく人もいる。


 年齢も、これからの進路も幅広い。


 さすがに海外に行ってしまうのは、佑典一人だったけど。


 「今までお世話になりました。ここで学んだことを、これからの教員人生に生かして行こうと思います」


 佑典も在校生やお世話になった先生たちに、一言感謝の気持ちを表した。


 卒業生の多くは地元に残り、遠方に去るのは少数派。


 遠方とはいっても首都圏とかなので、佑典が東南アジアに行ってしまうのは今回かなり目立った。


 「佑典、本当に行っちゃうんだな」


 佑典と同期で、その学年では代表的存在だった山室(やまむろ)さんって人が、佑典に話しかけてきた。


 「テレビニュースを見るたびに、心配になるよ。佑典がこれから行こうとしている国は、あんなところだなんて」


 最近もニュースで、暴動のシーンを目にした。


 市民のデモを軍隊が鎮圧していた。
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