誘惑~初めての男は彼氏の父~
 和仁さんのことをもっと知りたいという気持ちと、いい加減にしないと佑典に怪しまれるんじゃないかという思いが交差していた。


 「息子としては、いきなり父さんが再婚相手連れてきたりしても、たぶん素直に受け入れられないと思う」


 佑典は本音を吐露した。


 「なぜ?」


 「母さんのこともあったし、あの人が結婚不適格者なのは俺が一番知ってるし。・・・再婚相手の人も幸せになれないのは明々白々だから」


 裕福な生活。


 表面的には優しい夫であり父親。


 だけど和仁さんが愛したのは、レンズの向こうの景色だけ。


 子供時代に母の死を体験した佑典は、父親を反面教師にして、自分はああならないと誓ったという。


 ・・・。


 「理恵、四日分キスしていい?」


 帰り道、いつものように寮まで送ってくれて。


 寮の玄関が見えてきた頃、佑典の懇願された。


 「四日分?」


 「そう、四日分」


 辺りに人がいないのを確認した後で、私はそっと頷いた。


 それを合図に、木陰で唇を重ねる。


 何度目かはもう思い出せない。
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