誘惑~初めての男は彼氏の父~
 夏の夜、とある街角。


 爽やかな夜風に包まれながら、彼氏から繰り返し与えられるキス。


 思いのままに身を委ねたくなる。


 ・・・はずなのに。


 頭の片隅で思い浮かべているのは、初めての男のこと。


 あの時のとろけるような甘さに及ぶものはないと、密かに考えている私。


 いつか天罰が下りそう。


 ・・・。


 「じゃ、また四日後に」


 長いキスを終えて。


 私が内心、そのような最低なことを考えているとは夢にも思わない佑典は、名残惜しそうに私をぎゅっと抱きしめる。


 こんなに大切にされているのに、私は心の奥で・・・。


 「月曜日の昼には戻ってくるから、夜は会おうね」


 「了解」


 「その時にでもゆっくり、夏休みの旅行の計画立てようね」


 「うん、楽しみにしている」


 腕の中で私は、ありきたりの言葉を返す。


 「早く理恵を、俺だけのものにしたい。そうしないとなぜか心配で」


 まさか・・・佑典は何か予感しているのだろうか。


 私が誰かに奪われてしまうかもしれないと。
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