誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「いらっしゃいませ」


 来客を告げる電子音が鳴り、店員の挨拶が聞こえたので、入り口の方を見ると・・・和仁さんが入ってきた。


 「ずいぶん早かったね」


 約束の十分前に訪れた和仁さんは、すでに着席してお水を飲んでいる私を見つけて驚いた。


 「はい、大学が思ったより早く終わりまして」


 「僕も打ち合わせ、予想より早く終わったんだよ」


 今日はカジュアルなスーツ姿の和仁さんは、どこかで仕事の打ち合わせがあってそれを終えてから、ここに直行したらしい。


 私も授業が終わってすぐ、地下鉄駅まで歩いて、数区間離れたこのファミレスへと移動。


 大学から徒歩圏内にしなかったのは、誰かに見られるのは好ましくないから。


 それと帰りが困難にならないように、地下鉄駅から近い店を指定した。


 「・・・とりあえず、好きなものを注文して」


 まずはメニュー表を渡された。


 当然のようにご馳走してくれるらしい。
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