誘惑~初めての男は彼氏の父~
 「週末だから、交通量が多いね」


 店は中二階となっていて、窓辺の席からは店の前を走る国道が見渡せる。


 金曜日の夕方のせいか、絶え間なく車が行き交っている。


 ・・・食事が出てくる前に、まず世間話から始まった。


 「理恵ちゃんは、車の免許持ってるの?」


 「はい。何かと便利かと思いまして」


 「車本体は?」


 「まだそこまで余裕がなくて、ペーパードライバーなんです。就職したら買おうって思っています」


 ・・・後腐れのないように、必要以上のことは喋らないつもりだったのに。


 何か話しかけられると、つい余計なことまで答えてしまう。


 「今のところは必要ないよね。佑典の助手席に乗っていればいいから」


 「・・・」


 「佑典は若い割には、運転が上手いんだよね。僕が飲み会の送迎とかで散々こき使ったから、鍛えられたんだろうね」


 そういえばよく、「今日は父親をススキノに送迎した」って話していたことがある。


 飲み会に出向く父親の専属運転手状態だって。
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