誘惑~初めての男は彼氏の父~
 札幌駅前で道は行き止まりとなるので、そこを右折。


 程なく石狩街道に出ると、車は北へと向かって走り出した。


 渋滞もなく、車は快適にスピードを上げる。


 「もしかして寒い?」


 車の中は、エアコンが効き過ぎるようになっていた。


 私が腕を押さえ、ちょっと寒そうな仕草をしたのを赤信号の際に察したらしい。


 エアコンを少し弱めて、


 「気温下がったかな」


 窓を開けて、夜風を確かめた。


 「まだ風が生温い。気温があまり下がっていない。・・・今晩は熱帯夜を記録するかもしれないな」


 「熱帯夜?」


 つまり、夜になっても気温が25度を下回らない夜。


 このあたりでは年に一度あるかないかだけど、ここ数日、最高気温が30度を超える毎日が続いている。


 まだ夏は始まったばかりだというのに、猛烈な暑さ。


 加えて今夜は、最低気温が25度を下回らないという。


 私も窓を開けて、夜風を感じた。


 信号が青になり、車が風を切り始める。


 心地よかった。
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