野球してる君が大好きです。
「ほ、の…か……っ」





なんでそんな寂しそうな声で
私の名前を呼んでいるの…?










「ごめん……」

そう言って陽斗は
私の体を離した。



「俺な…千陽じゃあかんねん…」
久々の関西弁。


それはどういう意味なのだろうか。



「ほんまに、千陽じゃ…あかん…」
「なにそれ…」

私は千陽がかわいそうだと思った。


「わけわかんない‼︎千陽と付き合うために…私と別れたんじゃない‼︎私になにも言わないで…、勝手にアメリカ行って、
どんだけ私が辛かったか…わからないじゃない‼︎」





そう言ったとき、
私の口が塞がれた。




唇が重なる。





しばらくして、
唇が離れた。




「ごめん…。俺じゃ…あかんな…」






少しだけ声が震えていた。




「俺は…、今日千陽を振ったんや。好きちゃうねんもん。千陽じゃあかんねん」




かわいそうだよ…。









千陽がかわいそうだよ…っ










「なぁ、帆乃香。またやり直してくれませんか…」








私は頭の中がまだ真っ白で
千陽のこともなにも考えられない。





悠斗くんにもちゃんと言いたい。






でも、なんでだろう。






まだ陽斗に気持ちがあるみたいで。
悠斗くんが好きなはずなのに、








陽斗のこと、
陽斗との今までの想い出




それが頭の中で巡っている。
















まだ、好きなのかもしれない…。
少しだけ可能性がある。








彼はそこをついてきたのだろうか。




「むりやったらいい。それでも俺は諦めん。帆乃香を必ず…甲子園に連れて行く。それが悠斗じゃなくて、俺が連れて行けるようになるから。帆乃香はそれまで待っててくれますか…?」






彼は
本当に純粋で
誠実で
優しくて
少し照れ屋さん。


それでも、自分の意志は固く
仲間思いな野球部のエース。























悠斗くんは第2のエース。


















「本当のエースは俺だ」と
背中で彼は訴える。









私だって、
もっと前から
やり直したいって思ってた。


















悠斗くんは一時的なだけだった。
























陽斗はずっとだから。














なにがあっても支えるって決めたから。






















陽斗…















「陽斗‼︎」

私は彼を呼び止めた。















大きく深呼吸をして
彼に言った。











「甲子園に連れてってね‼︎」
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