キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「じゃあ、これでお願いします」
「わかりました。用意しておきます」
カルテを見ながら何か打ち合わせをしていたらしい二人のことを、私はちらりと横目で見る。
二人の様子はどう見ても獣医と看護師というだけで、私が心配するようなことは何もなかった。
……って、また探るように見ちゃってる。
樹さんも西岡さんも真剣に仕事をしているというのに、私、なんて心が狭すぎるんだろう。
少し落ち込んでしまうだけではなく何となく居心地が悪くなってしまって、早く診察室から出ようとバッグを持ち上げた時だった。
「あ、そうだ。先生、昨日はご馳走さまでした」
「……あぁ、いや」
「素敵なお店だったし、とてもおいしかったです」
「そうですか。それは良かったです」
樹さんが私には見せなかった微笑を西岡さんに見せた。
樹さんの表情に西岡さんも嬉しそうな笑顔を浮かべている。
……昨日って何?ご馳走さまって?
……二人で食事に行ったってこと?
……何でそんなに優しい表情で西岡さんに笑い掛けるの?
西岡さんは一緒に働いているんだから、それなりに会話もするだろうし、食事だって行くだろうけど……ものすごく狭いらしい私の心の中に、モヤモヤとした何かが生まれた。
……ダメ、こんな気持ち。
顔に出さないうちに早くここを出た方がいい。
「じゃ、じゃあ、失礼します。ありがとうございました」
「あ、はい。お大事に」
私の言葉に答えたのは嬉しそうな笑顔を浮かべた西岡さんだった。
……樹さんはカルテに何かを書いているようで、私の方を見てもくれていなかった。