キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「……私って嫌な女だったんだね」
ぽつりと溢してしまうと。
「まぁでも、恋愛なんてそんなものなのかもね。相手のことが好きだから嫌な女になることだってあると思うし、うまくいかないことがあるからこそ燃えるっていうかさ」
「……」
うまくいくはずのない関係にしがみついているのは私。
そう気付くと、また悲しくなった。
何やってんだろう、私。と思った時、璃世の携帯の通知音が鳴った。
「やだ。もうそんな時間?」
「あっ、私の話ばっかりしちゃってごめんね?今から伊野局長と待ち合わせしてるんだよね?」
「うん。今着いたってメールきてる。あーんもう、もっと美夜子と話したいのに」
「また電話で話そ?今日は璃世の元気な顔見れて、私は満足だから」
ね?と璃世を諭すと、璃世の目がきらんと光り、私にびしっと指を差してくる。
「!」
「美夜子、次に会う時はその罪悪感か何かよくわからないやつ、解決しときなさいよ?センセイ、悪い男じゃないんでしょ?難しいこと考えないで、欲望のまま捧げちゃえばいいのよ」
「!また、そんな直球のことを……!」
「じゃあ、私行くわ!」
「あっ、送るよ!」
「……もう来てるから、いらないわ。ほら、そこ」
「え?あれっ」
店の外を見ると、いつの間にいたのか伊野局長が立っていた。
目が合うと、局長は手を振ってくれて、私は軽く会釈した。
「じゃあね。また報告するのよ!」
「えっ……あ、行っちゃった」
私が返事をする前に璃世は颯爽と店を出て行ってしまった。
お腹が大きいのに軽やかに動けるのは璃世だからかもしれない。
局長が自然な動作で璃世の持っていた荷物を受け取り、二人が寄り添って歩いていく後姿を私は店の中から見送った。
いつ見ても、素敵な夫婦だと思う。
「罪悪感、かぁ……」
私はぽつりと呟き、すっかり冷えてしまったカフェモカを一口飲んだ。