キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
6.寄り添う心

~決意

 
***


ある日の仕事終わり、私はみんなが帰ったのを見計らって、まだ職場に残って薬の整理をしていた伊野局長に話しかけた。


「局長」

「え?あれ?まだいたの?珍しいな」

「あの、作業しながらでも構いませんので、5分だけお時間いただけませんか?」

「ん、何?どうかした?」


伊野局長は棚に手を伸ばしたまま振り向き、柔らかい笑みを私に向けてくれる。

私は“あること”を確認したいと相談できる人を考えていたんだけど、局長しか思い付かなくて、璃世に伝わってしまう可能性はゼロではないけど思い切って聞くことにしたのだ。

……“あること”とは、樹さんと西岡さんとの件。

数日、いろいろ考えているうちに、二人がブライダルサロンに一緒にいたのは二人が結婚するからではなく、違う可能性があるんじゃないかと思うようになったのだ。

その可能性の有無を私は確かめようとしていた。


「あの……あ、仕事の話じゃないんですけど。結婚式のドレスを選ぶ時って、普通は相手の人か家族を連れていくものですか?」

「え、坂本さん結婚するの!?璃世、何も言ってなかったのになぁ」

「あっ!違います!結婚なんてしませんから!そうじゃなくて!……えっと、そう!友達に相談されてて!どうなのかなって」

「あーなるほど。んー、俺たちの時は俺も一緒に二人で行ったよ。りぃ、かなりこだわりあったから、何度も試着してて散々待たされた。俺もほとんど変わらない衣装を何着も着替えさせられて、大変だった」


「まぁでも楽しかったけどね」と局長は笑う。

……私が考えた可能性は“樹さんは西岡さんの結婚相手ではなく、友達としてあの場にいたんじゃないか”ということだった。

二人がどれだけ親密な関係なのかはわからないけど、もし何でも話せる友達のような仲なら、単純にドレス選びに付き合ったんじゃないかと思ったのだ。

それを実際に結婚式を経験したことのある局長に聞いてみようと思った次第だ。

 
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