キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
 

「坂本さん」

「あっ、はいっ」


私は名前を呼ばれ、はっと虎谷先生に顔を向けた。

今までコタロウのことでいっぱいいっぱいで、その時初めて先生の顔を見たことに気付く。


「エリザベスカラー……あ、この首に付けているものなんですけど、できるだけ外さないようにしてください。包帯が外れるのを防ぐのと、あと傷口を舐めるとばい菌が入ったりして悪化すること多いですから、その点には十分注意して気を付けておいてください」

「……はい」

「ただ思うように動けなくてご飯が食べにくかったりしてストレスが溜まるのもコタロウくんには辛いことですので、こちらも様子を見てあげてください。数日間はこのままが最適ですが、その後は1日のうち少しの間だけ外してあげるなどしてあげたらいいと思いますよ」


私は淡々と話す虎谷先生の顔をじっと見てしまっていた。

先生は端整な顔立ちで、きっと笑えば誰もを魅了することは間違いないにも関わらず、笑みさえ浮かべず、淡々と話す感情が見えない表情は冷たい印象すら与える。

でも無性に惹きつけられてしまっている私がいた。

キレイだから、というよりも、こう、オーラがすごい……。


「何か質問はありますか?」

「あっ、いえ……」

「それではまた2日後に消毒にきてください。お大事に」

「はい……」


丁寧に治療や説明をしてくれたとは言え事務的だとも思える様子に、私は何となく近寄りがたい印象を持ってしまう。

ただ獣医としての義務を果たし、患者を見送るだけという印象だったのだ。

 
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