キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
 

「西岡さん、コタロウくんをキャリーバッグに……いや、やっぱりいい」

「え、あ、はい」


虎谷先生の言葉に対して西岡さんが少し驚いたような表情を浮かべたのが見えた。

どうしたんだろう?と思っている間に、コタロウは虎谷先生の手に抱えられキャリーバッグの中にすっぽりと収まる。

エリザベスカラーがあるせいで、その中は少し狭苦しそうだ。

その時、はっと気付いた。

虎谷先生がコタロウに触れても、コタロウが全く怯えていないことに。

コタロウは知らない人間にはまず警戒心を示し、特に男の人にはこれでもかというくらいの怯え方をする。

一度、姉夫婦と姪が私の家に訪れた時もコタロウは怯えて隠れてしまって、酷かったものだ。

しかも、ここは初めて訪れた病院だ。

それなのに……何故?

私が呆然と見ていると、コタロウに触れていても相変わらず笑みを浮かべていない虎谷先生の手が、流れるような動作でするりとコタロウの頭を撫でたのが目に映った。

声に出ていたわけではないけど、それはまるで「もう大丈夫だよ」と言っているかのようで、それに対してコタロウがにゃおと鳴いたのは偶然だったのだろうか。

虎谷先生のことを不思議な人だな、直感的に思ってしまった。

すごく冷静でクールなように見えるのに、コタロウに触れている時はふとあたたかさを感じる。

そして、コタロウが警戒する様子を見せないことに対しても。



私は虎谷先生のことが気になりながらも、コタロウの薬の説明を聞いてから薬を受け取り、家路についた。

 
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