キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
 

「ふ、目付きが鋭くなった」

「え?」

「“コタロウに早く会いたいのに、余計な仕事を押し付けやがって!伊野め!”って」

「な……っ、そんなこと思ってません!」


とんでもない濡れ衣を着せられそうになって、私は否定する。


「ははっ、冗談冗談。コタロウは元気?」

「はい。元気で元気で仕方ないくらいです。あ、今度お宅に連れていきますね!顔を見るだけでもしてあげてください」

「……それ、嫌み?」

「え?そんなことないですよ?コタロウがずっと伊野局長になつかなかったことなんて、一言も口に出してないでしょう?」

「う。傷えぐるなよ……」


伊野局長が本気で傷付いた表情を浮かべたのを見て、私はついくすりと笑ってしまう。

伊野局長は、私とコタロウを引き会わせてくれた璃世の旦那さまだ。

5年前、璃世と伊野局長はちょうど一回り離れた年の差婚をした。

年の差婚とは言っても、璃世は年齢以上に大人っぽくて、それに対して伊野局長は見た目が若々しいから、二人が並んでいてもそんなに年の差があるようには感じさせない。

そんな二人は私にとって、理想の夫婦。

よく小さなことでケンカはしているみたいだけど、数日立てばケロリとラブラブ夫婦に戻る。

その二人の間に赤ちゃんができたのは、つい最近のこと。

それまでには、いろいろと苦しいことがあったみたいなんだけど……。

お互いを想い合い支え合う二人を見ていて、さらに憧れの気持ちが大きくなったのは事実だ。

前の職場を辞めて次の仕事を探していた私にこの職場を紹介してくれたのも、璃世だったりするんだ。


「伊野局長ー。ちょっといいですかー?」

「あ、はいはい。じゃあ、申し訳ないけど頼むね。コタロウにもよろしく」

「わかりました」


私はパソコンに向かい、打ち込みを再開した。

 
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