キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
 

「……それを言うなら虎谷先生も同じですよ?」

「え?」

「病院での先生とここにいる先生、別人みたいですもん。獣医の顔の先生はクールだけど、今は話しやすくて……そう、距離が近い感じがして、何だか安心できます」


そう、まさに“距離が近い”。

その言葉がぴったりだ。

ふと先生のことを見ると虎谷先生がニヤリと笑い、私の顔を覗き込んできた。


「!」

「ふぅん。別人、ねぇ~。女子ってそういうのに弱いって聞くけど、もしかして坂本さんにも当てはまる?」

「へ?」

「いや、俺のギャップに惹かれてくれてるのかなってさ」

「……えぇっ!?」


つい今自分でも思ってしまったことを言われて、どきっと心臓が跳ねてしまった。

先生の目からも、私が先生に惹かれているように見えてるってこと?

それって……何か変な誤解を生むんじゃ……!?

そう気付いたものの私は何も答えられないでいると、虎谷先生が吹き出すように笑い出した。


「……くくっ。ほんと、坂本さんっておもしろいよなぁ~」

「あっ!またからかったんですかっ!?」

「違うって。まぁ、当てはまったかどうかは置いといてさ」

「?」


虎谷先生は相変わらず悪い笑みを浮かべて、人差し指を立てて、そのキレイに弧を描く唇に当てる。


「ここにいる俺のことは、病院の人間とか他の患者にはヒミツ、な?……俺と坂本さんの二人だけのヒミツ」

「な、なんですか、それ……っ」


“ヒミツ”という言葉にどぎまぎしてしまった私は焦ることしかできない。

……女子が“ヒミツ”という言葉にも弱いことを先生はわかって、わざと言っているんだろうか?

 
< 56 / 257 >

この作品をシェア

pagetop