キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「……それを言うなら虎谷先生も同じですよ?」
「え?」
「病院での先生とここにいる先生、別人みたいですもん。獣医の顔の先生はクールだけど、今は話しやすくて……そう、距離が近い感じがして、何だか安心できます」
そう、まさに“距離が近い”。
その言葉がぴったりだ。
ふと先生のことを見ると虎谷先生がニヤリと笑い、私の顔を覗き込んできた。
「!」
「ふぅん。別人、ねぇ~。女子ってそういうのに弱いって聞くけど、もしかして坂本さんにも当てはまる?」
「へ?」
「いや、俺のギャップに惹かれてくれてるのかなってさ」
「……えぇっ!?」
つい今自分でも思ってしまったことを言われて、どきっと心臓が跳ねてしまった。
先生の目からも、私が先生に惹かれているように見えてるってこと?
それって……何か変な誤解を生むんじゃ……!?
そう気付いたものの私は何も答えられないでいると、虎谷先生が吹き出すように笑い出した。
「……くくっ。ほんと、坂本さんっておもしろいよなぁ~」
「あっ!またからかったんですかっ!?」
「違うって。まぁ、当てはまったかどうかは置いといてさ」
「?」
虎谷先生は相変わらず悪い笑みを浮かべて、人差し指を立てて、そのキレイに弧を描く唇に当てる。
「ここにいる俺のことは、病院の人間とか他の患者にはヒミツ、な?……俺と坂本さんの二人だけのヒミツ」
「な、なんですか、それ……っ」
“ヒミツ”という言葉にどぎまぎしてしまった私は焦ることしかできない。
……女子が“ヒミツ”という言葉にも弱いことを先生はわかって、わざと言っているんだろうか?