キミとネコとひなたぼっこと。~クールな彼の猫可愛がり方法~
「言葉の通りだよ。ほら、俺ってクールで通ってるし、イメージ崩すと悪いだろ?」
いけしゃあしゃあと言い放つ虎谷先生に、そういうことか、と私はハァと小さく息をついた。
私がどうこうというわけではなく、“ヒミツ”にするのは虎谷先生の獣医としてのイメージを崩さないためなんだと気付いたから。
「……それ、しっかり自覚済みだったんですね。ということは……病院での態度って計算なんですか?」
「人聞き悪いこと言うなよ。あれだって素の俺だって。ネコかぶってるだけで」
「それを世間では計算って言うんです!」
「くくっ。そんなことないのになー」
可笑しそうに笑う虎谷先生につられて、私も「もう!」と笑い出してしまう。
「まぁでもさ、やっぱり人間に対してはお客さんだしそういう風にしてしまう部分があるのかもしれないけど、動物相手には計算しても仕方ないからな。構いすぎないように我慢してるとは言え、動物にはいつもちゃんと素の俺でぶつかってるから、安心してコタロウのことを任せてよ」
笑顔が浮かんでいるとは言え、ふと真剣な表情になった虎谷先生に私は釘付けになる。
たったの数回だけどつつみぎ動物病院に通って思ったことはたくさんある。
いつも患者さんが笑顔だということ。
そして、堤先生をはじめ、虎谷先生や看護師さんが患者さんたちと真剣に向き合っていて、とても信頼されていること。
それは待合室で順番待ちをしている時の他の患者さん同士の会話や、たまに待合室に出てきて患者さんの様子を見ている時の虎谷先生たちの対応を見ても明らかだ。
もちろん、以前通っていたモリモト動物病院もすごくあたたかくて好きだったけど……それと同じくらい、あたたかさを感じる動物病院だと思うんだ。
今のままでも十分素敵な病院だと思うけど……きっと虎谷先生がその殻を脱いで笑顔で対応するようになれば、もっと笑顔で溢れた病院になるのかなとも思う。