紫季と惺
はじまり
「ねぇ、ねぇ、美味しかったよね。紫季ちゃん。」


「うん。美味しかったね。森山。」




 私たち女2人は、レストランからの帰り道だった。









「紫季ちゃん、私ね、彼氏と別れたの!でね、き…」




 森山が、なんとなくな感じで、意を決したように言った。




「森山、また別れたの?」


「うん。別れたの。でね…。」




 森山は、なんか落ち込んでいるような感じで言って、期待してるような目で、私をみた。




「はい。はい。聞けばいいんだよね?別れた原因は、何だったの?」


「紫季ちゃん、わかってるねー。それがね、あいつ、10股してたみたいでさ。もう10股は、疲れたからって。それで、別れたの。」


「はぁ?何、それ。」




 内心、『あいつ』だけが悪いとは、咄嗟に思えなかったが、とりあえずこう言った。




「でね、お願いがあるんだけど…。」


「何?森山。」


「あいつをギャフンと懲らしめたいの。」


「懲らしめる?」


「うん。」


「でね、紫季ちゃんに懲らしめてほしいの。」


「えっ。私、関係ないし…。」


「そこをなんとか。」




 森山は、私を拝んだ。


「お願い。紫季様。」
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