彼のヒーローヴォイス
寮の部屋から、純一へ電話をかける。
呼び出し音は6回目…。
おかしいな… 今の時間ならいるのに…。
8回目が鳴った時、ガチャ…。
「おう! 怜 久しぶりだなっ!」
少しばかり、息が弾んでいた純一の声。
「うん…。今、大丈夫だったの?」
なんだか、やたら後ろの騒音と、人の声が聞こえる。
「あぁ、平気平気、それより、どした?なんかあったのか?」
純一が大丈夫ってゆうなら、大丈夫なのかな。
「あ、うん! 純一、私ね、なーんとっ! スカウトされちゃいましたーっ!」
「えぇっ!! スカウトっ?! マジかよっ!!」
スマホを耳から離さないといけないくらいの大きい声。
「ホントよ! マジよ!」
「へぇー すげーじゃん! あ、そのスカウトマン
もしかしてこの前の学園祭、見に来てたとか?」
「うん、そうなの! ジュリエット見てくれたみたい。
私的には、純一のロミオを評価してほしかったんだけどな…」
うん、これはホント。誰もが後半の純一のロミオに釘付けになってたもん。
「ははっ、オレはたまたま代役だったから誰も覚えてやしねぇよ。
んで、どーすんだ? 親には言ったのか?」
純一は鋭い…。
「あ…、えっと…、まだ…かな…。」
「やっぱりな…」
「親に話して、一緒に事務所へ来て、っていう話になったの…」
「まぁ…オレら未成年だから、そういったことは、どうしても親の同意が必要だしな。
もし、言いにくかったら、オレ付き合ってやってもいいぜ。」
「え…、でも…」
正直、一人で実家に戻ってこのことを伝える勇気がない。
けれど…。
「ん? どした?怜?」
「うん、大丈夫、純一と約束した夢への第一歩だもん。自分で伝える」
いつまでも純一に甘えてちゃいけない。 ちゃんと自分で進まなきゃ。
「そか、どうしても、って時は、また電話しろよ」
「うん、ありがと それじゃぁね」
「おう、じゃ、またな」
ディスプレイのボタンを押し通話を切った。