彼のヒーローヴォイス

寮の部屋から、純一へ電話をかける。

呼び出し音は6回目…。
おかしいな… 今の時間ならいるのに…。

8回目が鳴った時、ガチャ…。


「おう! 怜 久しぶりだなっ!」


少しばかり、息が弾んでいた純一の声。


「うん…。今、大丈夫だったの?」


なんだか、やたら後ろの騒音と、人の声が聞こえる。


「あぁ、平気平気、それより、どした?なんかあったのか?」


純一が大丈夫ってゆうなら、大丈夫なのかな。


「あ、うん! 純一、私ね、なーんとっ! スカウトされちゃいましたーっ!」


「えぇっ!! スカウトっ?! マジかよっ!!」


スマホを耳から離さないといけないくらいの大きい声。


「ホントよ! マジよ!」


「へぇー すげーじゃん! あ、そのスカウトマン
もしかしてこの前の学園祭、見に来てたとか?」


「うん、そうなの! ジュリエット見てくれたみたい。
私的には、純一のロミオを評価してほしかったんだけどな…」


うん、これはホント。誰もが後半の純一のロミオに釘付けになってたもん。


「ははっ、オレはたまたま代役だったから誰も覚えてやしねぇよ。
んで、どーすんだ? 親には言ったのか?」


純一は鋭い…。


「あ…、えっと…、まだ…かな…。」


「やっぱりな…」


「親に話して、一緒に事務所へ来て、っていう話になったの…」


「まぁ…オレら未成年だから、そういったことは、どうしても親の同意が必要だしな。
もし、言いにくかったら、オレ付き合ってやってもいいぜ。」


「え…、でも…」


正直、一人で実家に戻ってこのことを伝える勇気がない。

けれど…。


「ん? どした?怜?」


「うん、大丈夫、純一と約束した夢への第一歩だもん。自分で伝える」


いつまでも純一に甘えてちゃいけない。 ちゃんと自分で進まなきゃ。


「そか、どうしても、って時は、また電話しろよ」


「うん、ありがと それじゃぁね」


「おう、じゃ、またな」


ディスプレイのボタンを押し通話を切った。




< 17 / 71 >

この作品をシェア

pagetop