彼のヒーローヴォイス

封印…


デビュー前から話題になっていた私たち『TR2』は
デビューすると、アニメを知るファンたちの間から徐々に徐々に知られるようになり、
仕事も緩やかだけれど、増えていった。


極めつけは、各地で行われたアニメのイベントだった。
有難いことに、主題歌を歌う私たちも、イベントに呼ばれ、
地方の人たちが私たちを知り、応援してくれるようになった。


そして、イベントに参加すれば、顔見知りも多くなるワケで…

声優さんたちとも仲良くなり、打ち上げなどにも読んでもらえるようになった。

その中で、純一とほぼ変わらないくらいの年齢の声優の卵の子たちと、
何かあれば、集まるようになっていた。


中には、純一と同じ養成所に通う子もいて、私から聞くワケではないけれど、
純一の近況が耳に入ってきた。


発売されたCDドラマの評判がよく、
第二弾が制作されているらしいし、
スマホゲームのキャラもちょい役やガヤもし始めてるそう。


着実に声優への道をのぼってる…。
さすが、コツコツ派の純一だね…。


地方イベントでの打ち上げが終わり、
二次会へ向かう人、ホテルへ戻る人それぞれが
お店の前の入り口でガヤガヤとしてる時、ポン、と肩を叩かれた。


「え?」


振り向くと、打ち上げに参加していた若い男の声優さん2人がいた。


「ね、ね、怜ちゃん 二次会行かないの?」


茶髪の細身な男性が問いかけてきた。


「あ、私は、ホテルに戻ります…。」


「なんで? いーじゃん、みんな行くみたいだし、せっかくだから交流深めようよ」


もう片方、緩やかなパーマがかかった黒髪の男性が、私の左腕を、クィ、と引っ張った。


「ちょっ、ホント、明日、朝イチで帰るので…行けないんです…」


さりげなく、拒否するけど、腕を離してもらえない…

え…

どう…しよぅ…

なんとか、隙を見て逃げ出せないかな…


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