彼のヒーローヴォイス
その日、みんなが帰ってきたのは、24時を過ぎていた。

なぜか、純一も台本チェックとかで、まだ事務所にのこっていた。

「怜ちゃん、3日間ありがとな、返事は、また連絡した時に頼むよ」

「はい、こちらこそ、ありがとうございました。」

かばんを持ち、事務所を出ようとすると、

「あ、怜、送ってくよ」

純一が、私の方へと近づいてきた。

「荒井さん、じゃ、おつかれっす」

「あぁ、おつかれー」

事務所の地下駐車場へと二人で向かう。

特別、言葉はない。

純一が車のロックを解除し、私は、助手席のドアを開けて乗り込んだ。

「怜、アパートの場所は?」

エンジンをかけた純一が、私に尋ねた。

「あ、うん、前と変わってないよ」

「そっか、じゃ、行くぞ」

ゆっくりと駐車場を出る車、静かな振動が心地よく、知らず知らず、私は眠ってしまった。

「怜、着いたぞ」

純一が私を呼ぶ声で、ハッと目を覚ました。
「あ、ご、ごめん、眠ってた」

「3日間、疲れただろ? 今日はゆっくり休めよ」

「うん… ありがとね おやすみ」

「おやすみ」

車を降り、純一のハイブリット車が、角を曲がるまで手を振り続けた。
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