サヨナラからはじめよう
「・・あの、事情があったとはいえ彼と一緒にいたことは申し訳ないと思ってます」

「え?」

沈黙に耐えられなくなった私は先に口を開いた。
こうなったら先手必勝に限る。
実際私と司の間には何もないのだ。
納得いかないだろうが事実として聞いてもらう他ない。
少し驚いた顔のカナさんに構わず話し続けた。

「今日私のところに来られたのは司・・・・さんのことですよね?不愉快な思いをさせてしまったことは謝ります。ごめんなさい。でも、天地神明に誓って彼とは何もありませんし、これからもありません」

一気に吐き出すと私は頭を下げた。
たとえビンタの一発を食らうことになろうとも、私は嘘は言っていない。
これですっきりさっぱり帰って欲しい。
歯を食いしばって相手の出方を待った。

「ち、違います!誤解です!顔を上げてくださいっ!!」

「いいえ、どういう経緯にせよあなたに嫌な思いをさせてしまいました」

「そうじゃなくて、私はあの男の恋人でも何でもないですから!」

「・・・え?」

恋人じゃない・・・・?
じゃあこの人もあの男の遊び相手の一人だったってこと・・・?

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