サヨナラからはじめよう
「・・・・司?」

突然ゆっくりと体を下ろされ、ガクガクする足で必死で踏ん張る。と、

「涼子っ!!!」

ガバッとまたしても激しいハグを受けた。
え、もう呼吸困難は勘弁して欲しいんですけど。
さすがに彼も学習したのか、私が潰れない程度の力できつく抱きしめている。

「ありがとう・・・・すっげー嬉しい・・・」

「そんな大袈裟な・・・・別に司のためじゃないよ?たまたまだよ?」

「もう何でもいいよ。涼子が俺しか知らないってだけで幸せだ」

ぎゅーーーっと燃えるような体で包み込まれる。
なんだかちょっと震えてる?まさか泣いてないよね?!
・・・・っていうか!

バチンッ!!

「ってっ!」

「ちょっと!この手は何?!変なことする気じゃないでしょうね?もうほんっとにこれ以上は無理なんだから!司は早くオムライス作るの!」

どさくさに紛れて腰の辺りをもぞもぞ動いていた手を思いっきりはたく。
悪事がばれた司はちょっぴりバツが悪そうな顔で笑った。

「・・・・ばれたか。残念。まぁ時間はこれからいくらでもあるから焦らずいきますか」

「司がそれを言うの?!」

「あはは、やっぱりそれ言われたか」

全く・・・
どうやっても私は彼に振り回される運命なのかもしれない。
目があった瞬間互いに吹き出して思いきり笑った。
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