サヨナラからはじめよう
あれから三ヶ月。
私たちはあのマンションで共に暮らし始めていた。
休みの度に二人で色んなショップ巡りをしたり、ネットで好みのものがないか探したり、そうして少しずつ二人の新居に置いていくものを増やしていった。

司の作った家を私が彩る。
その夢が現実のものとなった。

信じられないほど居心地は最高で、まるでずっと前からここに住んでいたんじゃないかと思うほど。
司は失った時間を取り戻すように、一緒にいるときは片時も私から離れない。
私にどんなにあしらわれようとも、嬉しそうに尻尾を振ってはまとわりついてくる。
なんだかんだでそんな彼を愛しいと思ってしまう私も、結局のところ似た者同士なのだろう。


あんなに苦しんだ過去が嘘のように、私たちの毎日には笑顔が溢れていた。



「あ!こっちこっち!」

「遅くなってごめんなさい!」

「ん~ん、全然大丈夫だよ。今日はわざわざ時間を作ってくれてありがとう!」

「いえ、こちらこそまたお会いできて嬉しいです」

「あ~、もう涼子ちゃんってほんと可愛いっ!」

そう言うと突然ぎゅーっといい香りのする体に包み込まれた。
< 270 / 280 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop