好きになったわけ
えっと……つまり僕は

「部員になって欲しいの。幽霊部員でもいいから!」

なぜ僕なのでしょう?

「一瀬くんだけ帰宅部だったから。私知り合いはこの学校にいないし、頼める人が一瀬くんくらいしかいなかったから……」

そう言うと彼女は上目遣いでこちらを見上げてきた。うぅ……そんな顔されたら断れないじゃないか。

「迷惑なのはわかってる……けどどうしてもやりたいの」

「ち、ちなみにどんな部活……じゃなかった、同好会を作りたいの?」

「バンド同好会を……作ってみたいの」

バンド、その言葉に僕は反応した。なぜなら僕は……

「一瀬くん、ベースやってるんでしょ?自己紹介の時にそう言ってたな、と思って」

彼女の言う通り、僕はバンド少年でベースをやっている。中学の時から始めて、今でも続けている。が、今はバンドを組んでいない。それがこの学校に来た大きな理由なんだけど、それはまた今度。

「バンド同好会……」

彼女が言った言葉を反芻する。

「お願い、一瀬くん」

再び彼女が上目遣いをしてきた。まあ、僕もこの学校に来たときに軽音楽部がなくて落胆したけど……というか川崎は僕が自己紹介でベースやってるってことを覚えていてくれたんだ。ちょっと嬉しい。
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