天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 私は立ち上がり、窓に駆け寄って外を見回した。
 でも晃さんの姿はどこにもない。
 反射的に部屋から飛び出そうとして、ハッと我に返って踏みとどまる。

 なに考えてるのよ。晃さんを追いかけるつもり?
 追いかけてどうするのよ。もう全ては終わったんでしょ??
 夢の時間は終了したの。それをあたしは思い知ったじゃないの。
 この傷はその証。払った代償でしょう?

 それに晃さんが、この石に込められている意味を知っているかどうかなんて分からない。
 ただの回復祈願と災難除けの意味で渡してくれたのかもしれないじゃない。
 なのに追いかけて行こうもんなら、笑い者よ。いいツラの皮だわ。
 私は窓から離れ、ブラッドストーンを手に取り握りしめた。丸い形が手のひらを刺激して気持ちいい。

「あ、あれ? おかしいな?」

 なんで私、泣いてるんだろう。
 もうずっと感情の動きが止まってしまったように、涙なんて一滴も出てこなかったのに。
 この石を持ったとたんに、体の芯から涙が湧き出してきたみたい。
 うわあ、次々と涙が流れてくるよ。

 ……カラッポな冷蔵庫。いくら探しても卵なんて見つかるはずもないのに。
『べつに探してなんかいないよ』って自分に言い訳しながら、手さぐりで中を掻き回す。
 空虚な手が、寂しくて悲しくてたまらない。
 だからブラッドストーンを卵の代わりに見立てて、まだ希望に縋ろうというんだろうか?
 とことん……情けないなぁ……。

 私は石を握りしめた手を額に当て、どうかこの痛みと涙を消してくれるようにと、ひたすらに願っていた。


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