天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 不屈かぁ。なんだか勇ましいな。

 自分の誕生石にそんな意味があると知って、ちょっと誇らしい気分になる。


「すごく格好いいよね。ダイヤのモース硬度は10。自然界においてダイヤモンドは、何物にも傷つけられない」

「…………」

「世界中の人々憧れの宝石だよ」


 ダイヤモンドは傷付かない。

 それは引っかき傷なんかに対しては、間違いなくそうなんだけれど。


「それじゃあ聡美さん、これで失礼します。時間をとらせてしまってすみませんでした」

「あ、いえこちらこそ。今日はありがとうございました。近藤……晃さん」

「ご丁寧にフルネームで、どうも」

「あ、いえあの」


 つい近藤さんと呼びそうになってしまうんだもん! まだ慣れてないのよ! 

 そんなあたしのバツの悪い顔を見て、彼は楽しそうに声を上げて笑った。


「それではまた月曜日に」


 お互いに会釈をして、晃さんは会議室から出ていく。

 それを見送りながら、あたしの心に色々と思いが浮かび上がった。

 貴石と半貴石の事とか。近藤……晃さんって真面目でいい人だな、とか。

 傷付かないダイヤモンド。そして。


 お姉ちゃんと、あたし……。
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