天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 それからもことごとく、あたしに近づく男はみーんな姉目当て。

 いっそ清々しいほどに、ひとり残らず全員あたしをダシ扱い、という結果だった。


 だから学区の中学を卒業して、姉とは違う高校へ進学した時の解放感ときたら。

 これでやっと呪縛から逃れられる! って心底から安堵した。

 ホラー映画のラストで最後に生き残った主人公が、光り輝く朝日を拝むような心境だった。


 でも、甘かった。


 姉の脅威は、新型ウィルスを凌ぐ勢いで広域に広がってしまってて。

 あたしは変わらず、槙原満幸の妹という利用価値に苦しめ続けられてきた。

 共学じゃなくて女子高に進めば良かったと思ったけど、すぐにそれも甘い考えだったと思い知る。


 女の集団の方がよっぽど怖いよ。どれほどの女子グループに、あたしが呼び出しを食らったことか!

 泣いている女の子を庇うように囲んだ女の子達に

『この子の彼氏があんたのお姉さんに心変わりした! どうしてくれるんだ! 』

 ってイチャモンつけられて。

 その度に何度 知らねーよ! って心の中で泣き叫んだかしれない。


 大学に進学してからも状況はたいして変わらず。

 さすがに県外の人間は姉の存在を知らないけど、超有名人の姉の存在に彼らが気付くのにそう時間はかからなかった。

 もうその頃には、あたしの嗅覚も警察犬のように精度が増していて。

 姉目当てで近づく男を、ヤバイ薬のごとくに感知できるようになっていた。
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