天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 下心で近づいて来る男達を片っ端から排除し。

 後から姉に乗り換える計画で、あたしに交際を申し込んでくる(本当にいるんだ。そういう連中が)男達からの誘いを、断る日々。


 こんな日々を幼少期からずっと送っていれば、心が荒んで当然でしょう?


 あたしって、いったい何なんだろう? あたしの存在ってどんな意味があるの?

 それを見つける為に懸命に自分を磨いた。

 このままじゃダメなんだ。このままでいたら、あたしはミジメなまま。


 ヘアスタイルもメイクもファッションも、バイト代の全部を突っ込んで夢中で追及した。

 元々、子どもの頃から綺麗なものに対する執着は強い。

 これは姉への反動のような、根深いトラウマみたいなものだと思う。


 少しでも自分を輝かせるために。少しでも周囲にあたしを認めてもらうために。

 それはまるでダイヤモンドの研磨作業のようだった。


「マーキング」のように悪い部分をチェックして。

「クリービング」のように問題部分を排除して。

「ポリシング」のように、部分部分を磨いていく。


 そうやって手をかければかけた分だけ、確実に変わる自分の姿にあたしはとても安心できた。

 そして夢中になっていくうちに安心感は……やがて依存へと変わっていった。


 メイクを落とすのが怖い。素顔をさらすのが怖い。

 人前で、必死に作り上げた鉄仮面を外して素の自分に戻るなんて、絶対にできない。

 この仮面を身に着けてすら、姉に比べればゴミのようにちっぽけな存在なのに。
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