天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「ほーんと、古臭い店で嫌な感じだよねー」

「…………」


 せっかくの人の幸福感に水を差す、この声の主は中川 詩織(なかがわ しおり)ちゃん。

 彼女はあたしと同い年の新入社員。つまり同僚だ。


「ねえ聡美ちゃん。こーゆー内装の店ってなんか幽霊出そうで怖くない?」


 ミニハンドモップ片手に、薄気味悪そうな目で店内を見回してる。

 少々ムッとしたけど、あたしは顔に出さずに受け答えした。


「そうかな? まあ実際に老舗だしね。ここって」

「あたし好みに店を改装させてくれたら、もっと若いお客が来るのになー。なんちゃって。アハハ」


 首周りのスッキリしたナチュラルショートボブを揺らしながら、彼女は明るく笑った。

 大きな目を更に大きく強調するためのつけ睫毛と、しっかり描かれたアイラインが印象的な三日月形になる。

 初出勤の顔合わせで挨拶した時、あたしにはピーンときました。

 あーこの子、自分の魅力に多大な自信を持ってるタイプだなって。


 そういうことに関して女の勘は鋭くて、ほぼ確実に的中する。

 ていうか、本人が隠すことなく自信を周囲にダダ漏れさせてるわけだから、分かって当然なんだけど。
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