天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
 なるほど。大事な品を、大事な息子の結婚式に身に着けたいわけか。

 晴れの日を迎える親心、女心ってやつよね。そういう事ならぜひお手伝いさせていただかないと。

 それが、我が五百蔵宝飾店のモットー。


「分かりました。お預かりいたします。少しお時間をいただけますか?」

「ええ、いいわよ」

「詩織ちゃん、お客様をテーブルにご案内してください」

「はい。お客様、こちらでお待ちくださいー」


 洗浄だけなら、新人のあたしがやっても問題ないでしょ。

 主任はいつトイレから出てくるか分からないし、お客様もお忙しそうだし。


 あたしはエメラルドの指輪を持って、超音波洗浄機の所へ行った。

 せっかくなんだから、機械の力で細部まで丁寧に洗浄してあげたい。

 これは15~400キロヘルツの超音波が発する微細な泡で、目に見えないほどの汚れも落とす優れものだ。

 えっと、専用洗浄液を垂らして、スイッチオンして。

 よし、ではここに指輪を入れて……。


 その時、視界の端っこでお店の扉がスッと開くのが見えた。


「お疲れ様です。まだシャッター閉めないんですか?」

「あ、晃さんだー!」


 詩織ちゃんが嬉しそうな声を出す。

 キョロキョロと店内の様子を伺う晃さんと、あたしの目が合った。
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