天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「お疲れ様です、晃さん」

「あ、聡美さん、お疲れ様……」


 笑顔で挨拶を返してくれた晃さんの表情が、突然ビシリと固まった。


「晃さん? どうかし……」

「……うわああ! やめろおぉーーー!!」


 もの凄い形相で、晃さんが両手を伸ばしてこっちにドドドッと突っ込んでくる。

 あたしは目を丸くして硬直してしまった。


「よせーーーーー!!」


 そう叫ぶなり、晃さんがあたしの体を思い切りドーンと突き飛ばす。

 その反動で手から吹っ飛んだエメラルドリングを、晃さんがパシッとキャッチした。

 あたしは当然、そのまま見事に後ろに引っくり返る。


 ――ゴォーーーーーン!


 と、盛大に床と激突した後頭部に、除夜の鐘のような衝撃が走った。

 ぐわんぐわんと痺れる痛みが頭部全体に広がって、声も出ない。

 か……かなり、痛……いん、ですけどぉ……。


「なに考えてるんだ! エメラルドを超音波洗浄するなんて!」

「…………」

「多孔性で、フラクチャーの多い宝石を超音波にかけたら割れるだろうが!」

「…………」

「オパールやトパーズやペリドット、タイザナイトなんかも、超音波は厳禁! 分かったか!?」

「あ、あのぉー、晃さん?」

「なんだ!?」

「聡美ちゃん、目ぇ回しちゃってるみたいですよ?」
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