天然ダイヤとイミテーション・ビューティー ~宝石王子とあたしの秘密~
「実は聡美さんに、ぜひ受け取って欲しいものがあるんだよ」

 そう言って晃さんが、テーブルの上にある物を置いた。

 見るとそれは、黒いシンプルなジュエリーボックス。

 無言で晃さんの顔とジュエリーボックスを見比べるあたしに、ニコリと彼は微笑んだ。

「開けてみて」


 あたしは手を伸ばし、ボックスを手に取り、ゆっくりと蓋を開けた。

 中には……


 エメラルドの指輪が入っていた。


 あたしはポカンとしてその指輪に見入ってしまった。

 石はとても小さいけど、沖縄の海をすくい取ったような綺麗な色。

 四本の細いプラチナの立て爪が、クラシカルな雰囲気の高級感を醸し出している。


「これ……」

「受け取って。お詫びの品」


 あたしは目を数回パチパチさせた。

 ……え? え? え? 

 受け取……

 えぇぇーーー!?


「いえ受け取れません!」

 事態を把握するのに多少時間がかかって、返事をするのが遅れてしまった。

 そんな、エメラルドなんて高価な物、いただけない!


「お食事に誘っていたたただけで十分です!」

 慌ててロレツが回らなくて、舌を噛みそうになってしまった。

 晃さんはそんなあたしを見ながら、笑いをこらえた顔をしている。
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