【完結】Re-love 〜二度目の恋はあなたと〜
健一は、杏子に追い付こうと必死で走った。

小降りでない雨に体はびしょ濡れになっていた。


―――あっ、いた!


水色の傘をさす姿が目に入ると一層走るスピードをあげた。


「岡崎さん」


健一の呼びかけに杏子はゆっくりと振り返った。

健一は、杏子の目が一瞬にして見開かれたのを見逃さなかった。

健一のずぶ濡れの姿を見たからだ。


「傘は?」

「忘れた」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

二人の間には雨音だけが流れていた。


「入れば?」


杏子は、傘を少し上げて、隣を空けるようにして言った。

健一からは横顔しか見えないので、表情はわからない。


「でも・・・」


「そんなびしょ濡れの人間を放っておけるような神経してないから!」


はっきりしない健一に杏子は苛立ちを隠せずまくし立てた。


「・・・ありがとう」


健一はゆっくりと杏子の隣へ並ぶ。

健一は、杏子よりも20cm近く背が高いので、杏子が持つ傘では、少し窮屈だったが、入れてもらっている立場で文句を言うわけにはいかなかった。


「もう、世話がかかるんやから!これ持って」


「は・・・はい」


杏子は、横目で健一を見た後、傘を渡し鞄を開け何かを探し出した。


「あった!」


ハンドタオルを取り出すと、少し屈み気味になっている健一の頭を乱暴に拭き出した。


「ちょっ・・・おまえ・・・」


「はい。あとは自分でしなさいね」


健一から傘を奪い、代わりにタオルを渡すと何もなかったかのように歩き出した。


「ありがとう」


健一は濡れた制服を拭きながら言うと、彼女は視線だけを健一に向けた。

その目は鋭いようで、そうではなかった。

< 72 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop