秘密が始まっちゃいました。
荒神さんが泣き濡れた顔をあげる。私を見つめる綺麗な瞳。
やっぱり誰にも見せたくない。
今、この瞬間。この人は私だけのもの。

私は手を広げ、背伸びして、彼の頭を抱き寄せた。


「悪い、望月……、ホント……悪い」


荒神さんの腕が私の身体に回される。すがるような強い力。
熱い涙が私の肩に染み込む。


「悪くないです。いくらでも、どうぞ」


私は彼の耳にささやいて、髪を撫でた。

風の強いスカイデッキ。
誰もいないその夜空の下、クルーズが終わるまで、私たちはそうしていた。







< 147 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop