秘密が始まっちゃいました。
「荒神さん、私……」


改札を抜け、ようやく言葉が出る。しかし、何と言ったものかわからない。
先に立っていた荒神さんが振り向いて笑った。


「いーよ。おまえが俺のことそういう目で見てないのはイヤっつうほどわかる。ゆうべもその前も。おまえにとっちゃ、俺はただの泣き虫同僚だろ」


「イエ……、あの」


「でも、俺ももう引かないからさ。ゆっくり外堀から埋めて、おまえの逃げ場をなくしてやるよ」


さらっと怖いことを言って、荒神さんが私の手を握った。その力強さに、彼の本気が見えるようだ。


「荒神さん……」


「時間かけて、身も心も、俺のこと好きにさせる」


身も心も…って、私は……どうなっちゃうのだろう。
泣いてばかりの荒神さんが今、私の前で不敵に笑う。
俄かには信じられないことを言って……。


「好きだよ、日冴」


荒神さんが薄く笑い、私をファーストネームで呼んだ。

秋深し。
望月日冴29歳、
抱かれたい男ナンバーワンに告白された10月末の日曜日。




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