秘密が始まっちゃいました。
「俺もさ、涙腺ゆるいっての隠して女と付き合うのもしんどいから、しばらく本気で恋愛したくなかったんだ。このまま、ひとりでも仕方ないかなって。おまえが誰かと結婚する時はちょっとつまんないかなとは思ったけれど。
……だから、涙の件がバレたのは大きなきっかけだったんだ。
おまえは、誰にもバラさず、咄嗟に庇ってもくれた。その後も俺の下心だらけの要求に、親切心で付き合ってくれた。泣いてる俺を抱き締めてくれた……」


荒神さんが唇を横に引く。
雨の中、傘の下、太陽みたいに眩しく笑う。


「俺を守ろうとしてくれた、俺を笑わないで受け入れてくれた。気付いたら、おまえは俺の特別に変わってたんだ。
だから、もう誰にもやれないと思った。俺だけのものにしたくなったんだよ」


今この場で、彼の言葉を信じて、その胸に飛び込んでしまいたい私がいる。

だけど、同じ強さでダメだって唱える私もいる。

私はまだ自分の気持ちがわからない。

恋愛から離れすぎていたせいか、思わぬ相手からの求愛に戸惑いがあるのか、ここでいきなり荒神さんの『彼女』になるなんて不自然だ。

< 237 / 354 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop