秘密が始まっちゃいました。
久しぶりにやってきた荒神さんの部屋は、相変わらず綺麗だった。たぶん、あまり生活感がないせいだろう。
まだ見ぬ彼の寝室はもう少し乱雑なのかもしれない。

私は途中寄ったスーパーで購入した材料で、肉じゃがを作った。
小さな炊飯器でごはんも炊くことにする。

こんなに緊張する料理は初めてだった。

なにしろ、背後では何かと理由をつけて荒神さんがうろつき、やっとソファに戻ったと思えば、今度は私の料理する姿をニコニコ見ている。
対面式のキッチンなので、顔をあげると彼と目が合ってしまう。
もう、すごくやりづらい!


「荒神さん、こっち見ないでください」


「なんで?気が散る?」


「ハイ、このままじゃ失敗してマズいブツができそうです」


荒神さんが大きな声で笑った。


「おまえさ、それ料理のハードルあげてるぞ。俺が見てなかったら、超絶ウマイ肉じゃがになるってことだろ」


は……、確かに!
荒神さんが意地悪くニヤニヤする。
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