秘密が始まっちゃいました。




17:45の定時。
私は女子更衣室で私服に着替えてくると、自分のデスクで残務を整理しながら、荒神さんを待った。


「望月ちゃん、大変だね」


総務部人事課の先輩・芳野(よしの)さんが声をかけてくる。
35歳・人妻なおねーさま社員。


「芳野さん、代わってくださいよ」


私はぶーたれて彼女を見上げる。
芳野さんが手を口に当て、ふふふと笑う。


「ダメダメ、あんなフェロモンの塊と人妻が定時アフターを過ごしちゃマズイっての」


フェロモンの塊。
荒神さーん、あんたホントいろんな二つ名あるよねー。


「望月ちゃんも最近は彼氏ナシ、デートもしてないんだし。今日は割り切って楽しんでおいでよ」


「荒神さんじゃなきゃ、楽しみますよ。私、あの人と色々ありすぎ」


「そんな二人だからいいんじゃない。気の置けない関係の男女が、今日はお酒の力も借りて、一線踏み越えちゃうかもよ~」


ハイ、無いです。そんなミラクル。
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