秘密が始まっちゃいました。
「噂をすれば、ホラ来たよ!」


芳野さんはウヒヒと魔女のように笑いながら、去っていく。
総務部のドアを開け、こちらを見てるのは……。


「よ、望月、行こうぜ」


来たよ、荒神薫……。

私は通勤バッグを手に渋々立ち上がる。
あーあ、こんな男と一緒に退社したら、変な噂立てられないかな?

事情を知ってる総務部と一販課の女子に総出で弁明してもらわにゃ……。

周りの目を気にしながら、並んで玄関を出る私たち。
古い会社の持ちビルを出て、表階段を降りる。
荒神さんが私の姿を見て言う。


「望月さー、デートなのに気ィ抜けすぎじゃない?そのカッコ」


私のカッコ。ベージュのカプリパンツにぺったんこ靴。シンプルなボーダーカットソーという、楽ちん通勤スタイルですけど。
髪は会社でしてるのと同じポンパドールに後ろを垂らした状態。メイクはお昼休憩から直してない。


「いやー、残念ながら、今日言われたもんでぇ。盛るヒマありませんでしたわー」
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