秘密が始まっちゃいました。
「日冴、この前は……言い過ぎた……と思う」


歩きながら、荒神さんがぽつりと言う。


「あんなこと……こう何て言うか?おまえを支配してやるぜみたいなこと、言うつもりじゃなかった」



「でも、実際思ってたんですよね。それなら同じことです」


私はつっけんどんに答え、彼の方を見ない。精一杯早足で歩くけれど、足の長さが違う。荒神さんは悠々ついてくる。


「日冴、俺は……おまえと険悪になりたいんじゃないんだよ。あんな喧嘩だって、もうしたくないし……」


必死に言い募る荒神さん。この前の傲岸な態度とはうって変わって、懸命で余裕のない様子だった。
私は答えた。


「喧嘩はもうしなくて済むと思います。私、お付き合いはお断りしてますから」


すでに改札のある牛込橋は目前だ。
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