秘密が始まっちゃいました。
角はサラサラの黒髪を揺すり、頭を下げた。
二個先輩の福谷は人の良さそうな顔で笑う。


「アハハ、おまえマジで追い掛け回されてんだなあ。羽田さつきに」


福谷の呑気な笑顔に、角は苦々しい表情しか返せない。


「……正直、困っています」


角は羽田さつきが去っていったエレベーターホールをげんなりと見つめた。



*****



抱かれたい男とやらの称号はキヅキ電産男性社員の名誉称号。
公表されるトップ5の中に自分の名前を見つけるようになったのはここ2年だけれど、角良彰にはたいして興味のある称号ではなかった。

ナンバーワンの荒神薫くらい開き直れれば楽かもしれない。
しかし、そういうイベント事に乗れない自分には苦痛だ。
「仕事のできるイケメン」と看板を背負って仕事をするようなものだから。
結果、現在思わぬモテ方をして困っているのだし。


「いいじゃん。羽田可愛いよ、顔は」


角の横で缶コーヒーを飲みながら、福谷が言う。引っ掛かる言い方だ。
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