秘密が始まっちゃいました。
「性格がついていけないというか……」


角はぼそぼそと答えた。
最近本社に異動してきた二つ下の後輩・羽田さつき。
彼女に好意を示され、つきまとわれるようになって早１ヶ月。自分は確実に憔悴している。

羽田さつきはかなり変な女だ。


「毎日、弁当作ってくるんです。彼女」


「まー、甲斐甲斐しい。うちの嫁サン作ってくれないよ？新婚なのに」


「異常に手が込んでるんです。懐石料理かフランス料理かってなもんで。あれを毎朝何時から作っているのかと思うと……。しかも、断っても毎日準備してくるし……」


「あー、それはそれは……」


福谷が同情のため息をつく。
どうやら思っていたよりストレスだったらしく、角はせきを切ったように話し始めた。


「毎日、何十通もラインがくるし、毎晩、夕食に誘われるし、仕事の合間に理由付けて会いに来るし、とにかく重たいくらいの好意を感じるんです。土日も誘われるんですけど、断っても、なんかうちの近所に越してきたみたいでよく会っちゃうんですよ！正直、怖くないですか！？」


角の告白に、福谷がどうどうと手で抑える仕草をする。
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