秘密が始まっちゃいました。
私は振り袖のクリーニングをホテルにお願いし、いいと断るおばちゃんに無理矢理クリーニング代と草履なんかのレンタル料金を渡してホテルを出た。

定かではない今日の料亭の食事代や席料は、後々ホテルにリサーチして、お詫びの品とともに送らねば……。

おそらくは母からもお詫びをすることになるのだろう。
母には私からきちんと事情説明して謝罪に付き合ってもらわなければならない。
お母さん、親不孝な娘でスマン。

先方に謝るのはどうやら不要らしいけど、おばちゃんの気持ちを納得させるまでは、頑張って謝り続けなきゃ。

ホント、簡単にお見合い受けて、ぶち壊すもんじゃない。
裏では大騒ぎだよ。

これ、結婚式で花嫁をさらう的な映画も、実際は大変なんだろうな。
ホイホイやるもんじゃないよ。

猛省しつつ、ホテルの正面口を出るとタクシー乗り場の近くで荒神さんが待っていてくれた。



「それ、相手方もおんなじような理由があったんじゃねーの?」


帰り道の電車で、荒神さんが言った。
お見合い相手が逃げた件だ。
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