秘密が始まっちゃいました。
「まさか、そんなに泣いてくださるなんて思いませんでした」


私は言葉に困ってもそもそと言う。涙を見てしまった気まずさと、なんとも言えない胸の苦しさ。


「望月さぁ、おまえあの晩の俺、見てるよな?」


不意に荒神さんが投げ掛けた問いに私は凍りつく。

あの晩って……アレですよね?

荒神さんがひとりで泣いてた……あの夜の話ですよね。

いやいやいや、私、姿は見られなかったもん。
セーフだったもん。

焦りまくりで挙動不審の私に、荒神さんが決定打。


「ごまかさなくていい。おまえの姿は見えなかったけど、階段を降りていく足音は聞こえた」


「え!?」


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