秘密が始まっちゃいました。
私はポカンと彼を見つめた。荒神さんは苦々しく続ける。


「子どもの頃からとにかくすぐに泣くんだ。泣き出すと涙がいつまでも止まらない。
飼ってたセミが死んでも泣いたし、絵本でも泣く。テレビで特撮ヒーローが死んだ時は1ヶ月以上思い出しちゃあ泣いていたらしい」


「マジですか……」


なんと、社内抱かれたい男ナンバーワンが、実は泣き虫キャラですと?

だって、荒神薫だよ?
セクシーでイケメンで、女子に大人気の荒神薫だよ?

嘘でしょ?
ドッキリでしょ?

だって荒神さんの泣き虫少年時代すら、全っ然、想像できない。
昔っから、強気の飄々としたキャラだったとしか思えない!


「思春期頃から、これはマズイと思ってな。俺なりに泣かないで済む方法を考えてきたわけだ。解決策として、とにかく涙が出てしまう要因を徹底的に避けることにした。それが一番安全なんだ。
映画、本は誰かいる時は見ない。悲しい話は耳を塞ぐ。大好きだったじいちゃんの葬式の時は、裏山に登ってひとりでわんわん泣いた。
そのうち、家族も含め周りは、俺を涙もろいなんて思わなくなった」

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