EXCAS
『ACE、時間をかけすぎた。撤退するぞ』
「ですが、目標はここに」
『それがわかっただけでも充分な収穫だ。急げ、軍の援軍が来ている』
「……了解。直ちに帰還します」
『そう悔しがるな。再戦のチャンスは、きっと巡ってくる』
 悔しがる。人工知能であるはずの自分が、ACEの自問。だが確かにその通りだった。
 冷静な分析。実戦経験のない正体不明の人間に押され、援軍は捕獲対象に瞬く間に撃墜され。何も出来なかったEXCAS、それは人間に置き換えれば確かに悔しいだろう。
 それ以上の長考はせず、直ちに味方全体に撤収命令を出し戦線を離脱した。
 あちこちで上がった花火は潜み、黒い機体たちは彼方へと飛び去っていく。
 戦闘に勝った、そう自覚するのに時間は掛からない。コクピットを開け、通信を繋ぎ、大はしゃぎで騒ぐ大人や少年や軍人たち。
 その隅で、静かに溜息を吐くショウとレナ。
 コクピット内部で放心したリン、感覚の共有が切れてへたり込むショウにも反応をしない。
 流石に疲れたのか、イクシアスを保てずに仰向けに寝転がった。
『大丈夫? ひどく、疲れているみたいだけど』
「ここまで戦争と自覚した戦いは初めてなんだ。疲れないわけがない」
『……これから、どうするの? どこか離れる?』
「その必要はない。どうせ、やつらから通信が入る」
『――予想的中。地獄犬の戦艦からオープンチャンネルで通信が入った。すぐにこちらに着艦しろって。あの、嫌な男の人だった』
「断った瞬間、反逆者といって撃たれそうだな。いいさ、行こう。ゆっくりでいいから」
『了解、着いたら起きてね』
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