EXCAS
 頭上の先では魔術兵装で狙いをつけている。
 魔術兵装『DIS-PPK』それらは汎用だが、人一人肉片さえも残さず消すには大袈裟すぎる。
 まさに、生贄。
 神に捧げる供物、仰々しく送り出そうとしている。
 冗談じゃない。少女は声を聞いた。
 恐怖に震え、幻聴と取っただろう。
 瑠璃色の光が収束し、細かな粒子は一粒の飴玉に。溶け出した流れは光となる。皮膚を焼け溶かす無機質さは、幾十年前の爆弾に似ている。
 刻一刻と迫る、供物を届ける多勢の意思。
 少者は弱者である、この状況でもそれは適用される。
 弱肉強食、自然の摂理であるそれに。

「ふざけるな!」

 放たれる光の前に、そう、怒号が疾った。
 心の底から向けられる、理不尽に対する怒り。
 何者にも負けない熾烈な憎悪。
 漆黒の髪を振り乱し、蒼い瞳が火を滾らす。
 火蓋を切った口内からは、途切れる事なく噴火する激昂。
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