マー君2(原作)
その文字は不気味に一樹の目に映り込んだ。

「なっ−−」

一樹はその文字に言葉が出なかった。

それはまさに自分自身のことを表していたからだ。

気付かないふりをして、逃げてきた事実が−−。

そこにはっきり刻まれていた。

『偽善者はおまえもだろ』

教科書にはそう書かれていた。

一樹はその文から目が離せなかった。

そうか。

俺も、同じなんだ。

一樹は顔を上げた。

周りには白い仮面をつけた生徒達が立っている。

皆クスクス笑っている。

一樹はどうするべきかわかっていた。

いつの間机の上から教科書が消え、白い仮面がこっちを向いたまま置かされていた。

一樹はそれしかとるべき行動がないかのように、白い仮面を掴み、ゆっくりと顔に押し当てた。

その瞬間−−。

何か大切な物が胸の中から消えた気がした。

とても大切な何かが、硝子のように粉々に壊れ、崩れていくような。

それでいて心地よかった。仮面で顔を隠していると、心地よかった。

殻に閉じこまることが−−。

だけど・・・・・・。

悲しかった。

自分自身を見失っていくのが。
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