きらいだったはずなのに!

 午前中の授業が終わって、お昼休み。


 七月に入って本格的に暑くなりはじめたにも関わらず、クーラーのきいた教室じゃなく外にいるあたしとミヤコちゃん。


 日陰になっているし時折吹く風が気持ち良くて、そこまで暑さは気にならない。


 これから本格的な夏に近づけば、こんなふうに外にいられなくなるだろうけど。


 そんな中庭のベンチでお弁当を食べていると、ミヤコちゃんは唐突に桐島さんとのことを聞いてきた。


「で、噂の家庭教師とはよろしくやってるの?」


「ミヤコちゃん……、なんかその言い方はちょっといやなんだけど」


 ミヤコちゃんの言葉に思わず苦笑い。


 彼女なりにあたしの心配をしてくれてるのはわかるんだけど、その言い方はいやらしい気がするって思うのはあたしだけ?


 ……まあ、いいや。


 プチトマトを口に放り込んで、ろくに噛まずに飲み込む。


 よろしくっていうか、普通に勉強教えてもらってるけどね。


 きっと桐島さんは、給料以上の仕事をしてると思うよ。


 こんなあたしにでもわかりやすく教えられるんだから、相当なもんだ。

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