きらいだったはずなのに!

 ……本当は、桐島さんにさっき言ったことの半分は嘘だ。


 だって、テストは早く見せたかったもん。


 例え"バカ"って言われたとしても、あたしにとっては初めての高得点だったから。


 だけど、そうできなかったのはなぜだろう?


 それは、考えてもわからない。


 ただ、今、確実にわかっていることがある。


 それは、最初ほど桐島さんのことを、きらいだなんて思っていないってこと。


 大きらいなはずの勉強が、少しは楽しいと思えるようになったこと。


 たった二週間ぽっちでこう思えるんだから、これからもっと"きらい"が"すき"になっていくんじゃないかって予感がする。


 やっぱりまだ、桐島さんのことも勉強も、好きだとは断言できない。


 特に、桐島さんのことは。


 どうしても、悠斗と重ねて見ちゃうから。


 悠斗を、思い出しちゃうから。


 最近勉強を教えてもらってる時、よくそれを感じる。


 初めて桐島さんに会ったときは、裏表のある性格を知って、悠斗とダブって見えていただけなんだけど。


 ふとした瞬間の横顔とか、あたしをバカにする時の声とか、どことなく悠斗に似てる気がして。

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