きらいだったはずなのに!

 家に着いて、すぐさまベッドにダイブした。


 半ば放心状態だったけど、ほとんど機能しない脳みそで一生懸命考えた。


 悠斗の言った、“聞きたかったこと”と“言いたかったこと”について。


 悠斗は、あの時言えなかったことって言ってた。


 それってきっと、あたしたちが別れたあの日のことを言ってるんじゃないのかな。


 なにを聞きたいのか、言いたいのか、全く見当もつかない。


 だけど、悠斗は言った。


 また来る、って。


 “また”ってことは、もう一度悠斗と会うってことだ。


 その時のことを考えて、大きなため息がひとつだけ漏れた。


 あたしにも、あの時聞きたかったことがある。


 一方的に別れを告げたけど、言いたいことも聞きたいこともあるんだ。


 あの時は言えなかったけど、なぜだか今なら言える気がした。


「ミヤコちゃん、あの日話した失恋のこと、その時の彼氏が悠斗だってことに気づいただろうなあ……」


 力のない独り言は、静かな空間に溶けて消えた。

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